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医療通信

朝の一言

  • カテゴリー:安岡病院
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養母について

 

我が家には、95歳になる夫の養母がいます。
先日、その養母のヘルパーさんと夫の間に、介護に対する思いにズレが生じ、話し合う機会があったようです。
ヘルパーさんは限られた時間の中で、お湯はり〜着替え〜入浴〜風呂掃除をしてくれます。
独居で2度の骨折から養母は足腰も弱り、部屋の中で転ぶ事も多くなりました。誰かが来て様子を見てくれるだけでありがたいのに、嫌がる養母をなだめる事から始まり、風呂に入れてくれ、それを短時間で完了されるプロ中のプロです。
一方夫は、最近椅子やベットから動かず、自分でできる事も何かと人を頼り、何もしなくなった養母を見て「自分でできる事は自分でするように」と叱ります。
ヘルパーさんは、養母ができる事もすべて介助してくれるため、本人もそれに頼るようになり私たちにもそれを求めるのです。そんな養母の介護について夫がヘルパーさんに、もう少し介助を減らし見守りをして欲しいとお願いしたのです。時間的に難しい事は分かっていても、せめて自分でできる事は自分でさせて欲しい思いを伝えたかった様です。
長年たばこ屋を営み、元々自立心の強かった養母は、95歳になった今でも毎朝シルバーカーを押してヨロヨロと自宅の1階にある店へ降りてきます。
店にいる間も、介護保険のサービスをフルに使いそれなりに忙しい毎日を過ごしています。
確かに95歳の要介護4の老人です。身体もきついし、年相応だった健忘も最近は日常の色んな事を忘れ、介助が必要です。
日頃はそんな無気力な養母に夫は何とか日常を思い出させようと、服の脱ぎ着・下膳・ズボンの上げ下げ・日めくりカレンダーめくり・日記など、時間はかかっても自分でする様言います。
それに対し養母はため息をつき「はー。死んでしまいたい」「つらいばっかりだ」と言いながらも「そうだな、頑張らないと」と必死で自分の足で歩き、渾身の力でパンツをはき、読むのに一苦労する日記を書いているのを見ると、最近は感動すら覚えます。
3年前嫁に来た時は、そういう夫をとても冷淡だと思っていました。ですがこの3年、夫と養母のやり取りを見るうちに、自分でも気づかないうちに心境が変化していました。
徐々にできる事が少なくなる中でできる事をさせ、老いを受け止め、人生の終わりがその人の生き様だとするなら、その最後に向けてエールを送っているのだと思います。そういう生き方もあると教えてくれます。
そんな状況で日々挑む養母を今では尊敬し、それを見守る主人にご苦労様と言いたいです。
そして夫の願いを理解し、快く受け入れてくださったヘルパーさんは10年前お風呂介助に来るたびに、変わり者の養母に何度も追い返されていた事を懐かしく話してくれ、養母のよき理解者として今日もお風呂介助に来てくれる事に感謝します。

 

朝の一言(2012.10.25)より
※松涛会グループの各拠点では毎朝、松下幸之助の朗読、朝の一言を行っています。

 

安岡病院地域連携室
平樂寺千賀

 

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