院長 楠美 由紀
当院は、慢性期中心の病院です。
病態がいったん落ち着いて、今後の生活の場を考えたり、よりよく生きていただくことも視野にいれて取り組む必要がある点が、急性期の医療現場と大きく異なる点です。
『治療:キュア』だけでなく『ケア』も深く関わってきます。生活支援の面で、患者さん一人の退院支援を行う上でも、多職種間・地域との連携は欠かせません。入職後は、チーム医療の実践と重要性を深く実感できることと思います。
専門を越えてより広く、より患者さんの基本的なところへ踏み込んでいくことになるので、興味の持っていき方が広がります。私自身の例を挙げると、消化器内科医として、他の医師から相談を受けたり、アドバイスができると「専門を持っていて良かった」と実感します。
一方で、現在は栄養チームに入り、患者さんが最期までご自分の「口」で食べる喜び、生きがいを支えることにも取り組んでいます。より人間的なところにふれることで、大きな学びを得ています。
たとえば、患者さんと時間をかけて向き合い、一人の人間として、敬意を表して診ることで、改めて気付いたことは数多くあります。急ぐあまりに、患者さんの顔も見ずに処置をしたり、早く早く…と焦って図らずも機械的になりがちな現場もあるかと思いますが、当院では、患者さんのお顔をみて、世間話やご家族のお話をして、本音を話されやすい雰囲気をつくって、傾聴していくことが基本です。
院長の立場としては、ワーク・ライフ・バランスの充実も重要なテーマです。
医療職はなかなか難しい面もありますが、たとえば医師の場合、休日や夜間は当直医に任せることができる体制としています。もちろん、患者さんやご家族のご希望や症状次第で、主治医が出る場合も、医師自身が気になって出る場合もありますが、問題がなければ当直医に任すことができます。その選択肢があることで、自分の時間を確保しやすい環境にしています。
また、女性の再就職支援や育児支援も充実しており、今後さらに広く現場の声を集めながら、取り組んでいきたいと考えています。
開設から55年の歴史の中で、多くの方々のご尽力があり、患者さん一人ひとりに寄り添う質の高い『ケア』には定評をいただいています。一方で、今後は時代の流れと共に『キュア』のさらなる質の向上に努めています。
2020年の本館完成・地域包括ケアへの新たな取り組みに向けて、一緒に歩んでいただける方をお待ちしています。